【グラバー家ヒストリー EP5】グラバー邸のいろいろ① | 【公式】グラバー園

【グラバー家ヒストリー EP5】グラバー邸のいろいろ①

2019年8月20日
ツル:みなさん、こんにちは。ツルです。前回はグラバーさんと一緒に働いたマッケンジーさんのお話でした。
富三郎:親子ほど年の離れた2人でしたが、マッケンジーさんの晩年の姿を見て、マッケンジーさんは父さんを信頼していたのを感じました。
グラバー:うむ。マッケンジーは私にとって、長崎さらには日本中で仕事をするきっかけを与えてくれた方だ。
ツル:大切な出会いでしたね。そういえば、マッケンジーさんは晩年をグラバー邸で過ごされましたけど、そのグラバー邸のお話がまだでしたね。
富三郎:では、今回のお話は私たちが暮らしたグラバー邸のお話にしましょう!
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 1863年(文久3年)、グラバーは枝が曲がりくねった老松が立った南山手1番と南山手3番の敷地に邸宅を建築しました。グラバーはこの老松を「IPPONMATSU(一本松)」と呼び、地元の人からは長崎の方言で「曲がった」の意味を指す「よんご」を使い、「よんご松のガラバさん方」と呼び親しんでいました。 建築したのは熊本県天草出身の日本人大工 小山秀乃進です。彼は旧グラバー住宅のほか、旧オルト住宅や大浦天主堂の建築も行っています。旧オルト住宅については、建物の平面図が小山家に残っており、そこには「フィート」や「インチ」で記された欧米式の寸法から、日本式の「寸」や「尺」で書き加えられた筆跡を見ることができます。

ツル:暮らした人たちは外国人だけど、家を建てたのは日本人大工なのね!
富三郎:グラバー邸の建築を行った小山家は、長崎で居留地の造成やそこの建物の建築に携わった一族の1つです。
グラバー:小山家がある天草地域は石工の街で、関わった建物が世界遺産に登録されたことから最近では「石工の里」としてガイドブックを出版して情報発信をしている。
富三郎:世界遺産への登録で自分の街の歴史を見直すきっかけになっていますね!

 完成したグラバー邸は木造平屋建てのバンガロー風の建物です。煉瓦で積まれた煙突があり、鎧戸が付いたフランス窓がベランダ沿いに巡らせたコロニアルスタイルです。一方で、屋根は瓦を使用し、壁は日本伝統の土壁を使用しています。また建物は応接室や寝室がある主屋と台所がある附属屋に分かれています。
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(工事中の旧グラバー住宅の室内の壁)
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ツル:いろんな建物の用語があってよく分からなくなったわ!
グラバー:コロニアルとは、17~18世紀のイギリスなどの植民地に見られていた建築様式である。植民地での強い日差しを避け、通風をよくするために用いられた形式が始まりと言われ、ベランダを巡らせ、大きな窓を付けるのが特徴だ。そしてバンガローは、木造平屋造りで建物の周りにベランダをつけている。また全体に傾斜の緩い屋根をもつ建物のことを指す。
富三郎:フランス窓や鎧戸はこれのことを言います。
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 1968年(昭和43年)にまとめられた旧グラバー住宅の修理工事報告書によると、建築当初、グラバー邸はシンプルなL字型でしたが、年月を経るごとに増改築を繰り返し、現在私たちが知っている住宅の形になりました。

グラバー:暮らしていく中で、家族が増え兄弟たちも来て、いろんな人があの家に集ったの。
富三郎:思えば父さんが住み始め、私たちも大人になって受け継ぎ、戦争があって・・・今年で156年もあの場所に建っているんですね。
ツル:あの家はいろんな長崎の変化を見てきたのですね。
グラバー:現存する日本最古の木造洋風建築だからいろんな物語を見てきておる。そして戦争が終わったあとの1961年(昭和36年)に国指定重要文化財に登録され、2015年(平成27年)には、近代化に貢献した私が住んだ住宅として「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界遺産に登録もされた!
富三郎:やっぱり父さんはすごい!居留地の父!
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グラバー:まだまだ私の家にはいろんなエピソード、伝えたいことがある!よし、次回も引き続き私の家についてお話しよう!


※ここではグラバーたちが暮らした時代の建物を「グラバー邸」とし、重要文化財に登録以降(1961年以降)の建物を「旧グラバー住宅」として表記しています。

<参考文献>
長崎文献社『旅する長崎学9』2008長崎文献社
長崎市『重要文化財旧グラバー住宅修理工事報告書』1968長崎市
ブライアン・バークガフニ『グラバー家の人々』2011長崎文献社

【シンポジウムのご案内】
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今年はトーマス・グラバー来崎160年の年です。また、グラバー園内にある旧グラバー住宅は、約50年ぶりの耐震補強を含む保存修理工事を行っています。この節目の年にグラバー園保存活用検討委員会では、長崎市立図書館との共催イベントとして「シンポジウム」を開催いたします。旧グラバー住宅とその住人たちの歴史をふりかえり、この歴史と文化財を後世に伝承していくための未来を考えてみませんか?
こちらのシンポジウムへのご参加は事前申込制となっておりますので、以下の内容をご確認の上、長崎市立図書館へお申込みください。

日 時:8月31日(土) 14時~16時30分(開場13時30分)
場 所:長崎市立図書館 多目的ホール
定 員:120名(定員になり次第、締め切らせていただきます)
申 込:長崎市立図書館カウンターへおいでになるか、電話(095-829-4946)でお申込みください。
参加費:無料
主 催:グラバー園保存活用検討委員会・長崎市立図書館



【旧グラバー住宅 耐震化を含む保存修理工事について】
現在、旧グラバー住宅は耐震化を含む保存修理工事のため、見学及び順路に変更がございます。約50年ぶりとなる、今しか見ることができない世界遺産の保存修理工事の様子を間近でご覧ください!
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グラバーに関する展示については、「グラバー特設展」と題して、「旧リンガー住宅」及び「旧スチイル記念学校」で開催中です。ぜひこの機会ご覧くださいませ。
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グラバー特設展についてはコチラをご覧ください。

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