【グラバー家ヒストリー EP11】西洋の技術の導入③
2019年12月10日
ハナ:みなさん、こんにちは。ハナよ!私が甦る前は、お父様が日本に取り入れた西洋のモノについてお話をしていたらしいわね♪富三郎:父さんが行ったことは語りつくせないほどあるけど、今は西洋の技術について紹介しているんだよ♪
ツル:それにしても毎回、蒸気、蒸気・・・・もうこれ以上蒸気機関についてのお話はないでしょう。
グラバー:今回も蒸気機関じゃよ。
3人:えーーーーーーーーー!?

長崎港の南西約14.5キロメートルの先に「高島」という有人島があります。高島では1695年(元禄8年)に石炭が見つかり、1710年(宝永7年)佐賀藩の上級家臣であった深堀家の援助のもと炭坑事業がスタートしました。事業が始まった当初は人力によって石炭を採掘していましたが、大幅な時間と労力を消費しました。佐賀藩はこれらを改善するためにグラバーへの相談のもと西洋から機械を導入することにしました。
富三郎:この時の佐賀藩主といえば、鍋島直大氏。たしか16歳にして藩主となった方ですね!
グラバー:高島のことについて話したとき彼はまだ十代であったの~。効率が良く、少しでも安全な方法で石炭を採掘することは大事である!この話をもらって、私は香港に渡り、「ジャーディン・マセソン商会」の幹部と会い、この事業について資金を援助してもらうようお願いをしたのだ。そのあとアバディーンにも行き、採炭用の機械の購入とイギリス人の技術師も雇った。忙しかったの~。
必要な資金を確保したグラバーは、石炭採掘のために必要な物を輸入。1868年(慶応4年)にグラバー商会と佐賀藩は新しい採炭事業の契約書を交わし、立坑を掘る作業を開始しました。そして翌年4月17日、地下約45メートルのところに炭層を発見しました。これが日本最初の洋式立坑である「北渓井坑」です。北渓井坑は日本初の蒸気機関を導入した近代炭坑として2015年に旧グラバー住宅と同じく「明治日本の産業革命遺産」として登録をされました。
ツル:グラバーさんが資金援助に行ってから着々と計画が進んでいったのですね!
ハナ:お父様と一緒に北渓井坑を訪れたウィルソン・ウォーカーさんは、石炭を掘り出すことにとても期待していて、蒸気船でその石炭を上海に運ぶことについてお父様と話し合ったそうよ。
富三郎:ウィルソン・ウォーカーさんと言えば、三菱商会の国際航路の開設の時、指導者として活躍した方ですね。弟のロバート・N・ウォーカーさんは、長崎で「R.Nウォーカー商会」を設立したり、「バンザイ清涼飲料水工場」を開業していますね。
グラバー:高島炭坑については、長崎だけでなく、東京でも注目されていた!1872年発行の『東京日日新聞』では、私が高島に石炭を開発し、坑道を整備して軌道を敷き、採掘作業のスタッフなどの運送を行っていると記している。しかもこの事業で、長崎住民も利潤を得ることが多く、皆グラバーの徳を仰げるよしと記されている!
富三郎:父さん、さすがです!!

質の良い石炭を西洋の技術を取り入れた方法で採掘した高島炭坑は、順調に操業を進めていきました。しかしグラバーが援助を受けていたジャーディン・マセソン商会への借金が膨れ、さらに援助が断ち切られたことでグラバー商会は倒産。高島炭坑の権利とすべての機器の所有権がオランダ貿易協会に移りました。さらに1874年(明治7年)、外国人が日本の鉱山を所有することを禁止する日本坑法が可決され、政府は高島の所有者を土佐藩出身の後藤象二郎が社長である「蓬莱社」に払い下げ。その後は同じく土佐藩出身の岩崎弥太郎が社長を務める「三菱商会」へ経営が移っていきました。グラバー商会倒産後、高島炭坑にはグラバーの弟アレクサンダーとアルフレッド、イギリス人技師が残りましたが、グラバーは1880年(明治13年)から所長しとして高島に舞い戻り、三菱商会時代には顧問として1885年(明治18年)まで勤めました。
グラバー:高島での仕事をしていた初めの頃は、宝物を見つけるような少年の気持ちで夢中で石炭を掘ることに一生懸命だった。しかし、「経営」となると夢ばかり言ってはいられなかった。。。。
ツル:将来の情勢を見ながらお金をやりくりし、スタッフを束ねていくのは大変なことです。それがスコットランド人と日本人なら文化が異なるから尚更大変ですよ。 富三郎:けれど、父さんが取り入れた蒸気機関などの技術は日本に来て大活躍しています!それにこれが認められて、勲章を授与されたり、2015年には父さんの住宅やこの北渓井坑が世界遺産に登録されたではないですか!
ハナ:すべてをパーフェクトにできる人なんていないわ。お父様は経営者よりも商人や開拓者だったってことよ。
グラバー:なんて良い家族なんだ!よし、元気が出た!私が武器だけではなく、どれだけ日本の近代化に貢献した者は発信しなければ!
ツル・富三郎・ハナ:次は蒸気機関以外の話を期待しています!!

■明治日本の産業革命遺産公式ホームページはコチラへ。
■高島についてのホームページはコチラへ。
<参考文献>
ブライアン・バークガフニ『グラバー家の人々』2011長崎文献社
【旧グラバー住宅 耐震化を含む保存修理工事について】
現在、旧グラバー住宅は耐震化を含む保存修理工事のため、見学及び順路に変更がございます。約50年ぶりとなる、今しか見ることができない世界遺産の保存修理工事の様子を間近でご覧ください!



グラバーに関する展示については、「グラバー特設展」と題して、「旧リンガー住宅」及び「旧スチイル記念学校」で開催中です。ぜひこの機会ご覧ください。

グラバー特設展についてはコチラをご覧ください。