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Story 88グラバー図譜

 トーマス・グラバーの長男倉場富三郎は1912(明治45)年ごろから、長崎の画家を雇って魚類図譜の作成に取り組んだ。完成まで21年の歳月を要した同図譜は、上質紙に極めて緻密に描かれた823枚の水彩画からなる集大成である。

 1941(昭和16)年春のある日、日本民族学会創始者で魚類学を研究していた渋沢敬三は、倉場富三郎の魚類図譜を閲覧するために南山手9番地の倉場宅を訪ねた。渋沢は、その日の午後のことを次のように書き残している。

 「倉場さんのお宅に参上したのは午後の1時半頃だったと思うが、ようこそ来られたと早速図譜を大きな書架から順次持ち出された。(略)自分は倉場さんが一冊ずつ運ばれる図譜を、非常な喜びで一枚一枚くりひろげては細かく拝見し、時には方言中興味あるものを写し取ったりしたために、意外に時間がかかり、たしか全部見終わったのに3時間半はたっぷりかかったのであろう。倉場さんはさも嬉しそうに一冊ずつ書架から出し入れされ、時に質問に答えられ楽しそうであったが、その間手持無沙汰で迷惑だったのは、倉場令夫人と一緒に来られた私の友人たちであったろう。全部拝見してようやくお心づくしのお茶とおいしいキャナッペを頂戴して、お礼を述べ辞去した時は、倉場さんのお宅から一眼に見おろす長崎港はすでに夕方の日射しで色どられていた。」

 現在、「日本西部及び南部魚類図譜」と題され、俗に「グラバー図譜」と呼ばれる写生図の一大コレクションは、日本四大魚譜の一つに数えられ、長崎大学附属図書館に保存されている。

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