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Story 5南山手の「バブーシュカ」

 旧グラバー住宅のダイニングルームには大きな木製のディナーテーブルがある。これは、南山手に住んでいたクリスティーナ・シェルビニナ(ChristinaScherbinina)女史の死後、グラバー園に寄贈されたものである。

 クリスティーナの父は、明治2年(1869)頃に来崎したアフリカ系英国人、リチャード・フォード(RichardFord)で、母は日本人女性の沢チワ。フォードは荷揚業や仲買業を営み、雨のドンドン坂沿いの南山手22番地に洋風住宅を建てた。フォードは明治36年(1903)に他界し、坂本国際墓地に埋葬された。妻チワは昭和10年(1935)に亡くなり、夫のとなりに葬られた。一人娘のクリスティーナは幼児期からウラジオストクの学校で学んだ。卒業後もその地に残り、ロシア人船長のシェルビニンと結婚して一男一女の母となった。クリスティーナは長い間ウラジオストクに住んでいたが、夫の死を機に長崎へもどり実家の南山手22番館に居を構えた。ロシア正教の信者だったクリスティーナは、長崎を訪れるロシア人たちを家で接待し、彼等から「南山手のバブーシュカ」として慕われた。昭和41年(1966)に亡くなったときは、多くのロシア人や日本人が葬儀に参列したという。現在は坂本国際墓地で両親と並んで永眠している。

 旧グラバー住宅のディナーテーブルを見ると、ロシアの家庭料理を楽しむ在りし日のロシア人たちが目に浮かぶ。※バブーシュカ:女性が頭を覆うスカーフの事。転じてロシアでは老夫人や祖母の事を親しみを込めてバブーシュカと呼ぶ。

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