日本語では「旧グラバー住宅」だが、英語では「Former Glover House and Office」、つまり「旧グラバー住宅と事務所」となっている。 グラバー商会の事務所は大浦海岸通りに堂々とたたずんでいた。なお、日本人客を自宅で接待したとしても、グラバーが自宅を「事務所」として使った証拠はどこにもない。南山手のグラバー邸前に設置された大砲を捉えた写真があり、いかにもそこで武器を陳列していたように見える。しかし、日米および日英修好通商条約の第三条では、「軍用の諸物は日本役所の外へ売るべからず」と明記されており、武器の密売が原則として禁止されている最中で、日本人に売るために自宅前に置いたものとは考えにくい。大砲を目撃した松江藩の桃節山は次のように日記に記している。「其前には台場共を相構へ鉄砲拾挺余備へ居れり、しかし此台場之容子を見るに、左まての要害とも思はれず、もしくは是も一ツ之なぐさみなる乎」。