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Story 52忘れられた「異人館」

 旧グラバー住宅が竣工した年と同じ文久3年(1863)、初期の西洋式ホテル「グリーンズ・ホテル」が南山手11番地で建設された。ベル・ビュー・ホテルに改称され、大正9年(1920)に廃業するまで長崎居留地の高級宿泊施設として賑わった。廃業と同年、長崎の経済界に君臨していた澤山精八郎が土地と建物を購入し、跡地に豪華な洋風住宅を新築した。同住宅はその後、旧居留地の情緒が残る南山手に異彩を放った。

 大村藩士澤山熊右衛門の長男として生まれた澤山精八郎は、長崎の広津館で英語を学びアメリカ領事館の勤務を経て、明治9年(1876)に父が経営する運送業を継承して澤山商会を設立。澤山汽船や長崎銀行などを設立して長崎の発展に貢献するかたわら、長崎県会議員や貴族院議員も務めた。長崎港に寄港したフランス海軍将校を歓迎するレセプションを開催し、他界する前年の昭和8年(1933)にはフランス政府よりシュヴァリ・エド・シジオン・ドーヌール勲章を受賞した。

 息子の澤山昇吉は昭和32年(1957)に初代在長崎フランス名誉領事を務め、澤山商会の後継者と長崎国際観光センター会長として戦後長崎の復興に尽力した。同41年(1966)4月、南山手の自宅を「異人館」という観光施設に改造して公開し、話題を呼んだ。

 しかし、「異人館」は長くは続かなかった。南山手を訪れる観光客の急増に伴い、旧澤山邸を解体して跡地に近代的なホテルを建設することとなった。グラバー園が開園したと同じ昭和49年(1974)、東急ホテル(現在のANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒル)が開業した。

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