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Story 62昭和10年のガーデン・パーティー

 1935(昭和10)月5月、リンガー家や他の長崎の外国人居住者たちは、イギリス国王ジョージ5世の戴冠25周年を盛大に祝った。まずは長崎市大村町(現・万才町)の日本聖公会教会と英国領事館でそれぞれ式典とレセプションを開催し、それから南山手14番地(現在の旧オルト住宅)でガーデン・パーティーを開いた。地元の聖職者ら全員が仙台の宗教総会議に出席しなければならなかったため、この行事を、実際の記念日より1日繰り上げて5月5日に変更しなければならなかった。結果として、長崎が大英帝国で最初の式典を挙げることとなった。長崎英国領事館は、日本人および外国人名士あてに招待状を発送した。

 フレデリック・リンガーの長男フレデリック・E・E・リンガー夫妻がガーデン・パーティーを主催し、自宅の南山手14番館を会場に提供した。邸宅の居間とベランダだけではスペースが足りず、白いクロスが掛けられた小さなテーブルが前庭の芝生に並び、招待客は四人一組で席に着いて西洋料理に舌鼓を打った。席に座っている日本人客と立ったままで話す倉場富三郎の姿が写真にとられている。

 トーマス・グラバーと日本人の母親の間に生まれた彼は、経済界のリーダーと異文化間の架け橋として長崎において重要な役割を果たしていた。多くの友人への挨拶のために、芝生中のテーブルを回っている途中のスナップであったと推測される。これは倉場富三郎の気配りと人当たりの良さを覗わせる貴重な写真と言えよう。それは、長崎の泰平な時代を偲ばせる最後の写真の一枚でもある。

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